決算期を変更したいけれど、いつまでに届出をすればいいのかわからず不安になっていませんか?
事業年度の途中で決算月を変更する場合、変更手続きや届出の期限について気になる点が多いと思います。
決算期の変更は会社の経営に大きな影響を与える重要な意思決定です。
変更のメリットやデメリットを十分に検討し、適切な時期に必要な手続きを行うことが求められます。
この記事では、決算期変更の手続きや届出期限、注意点などについて詳しく解説します。
決算期変更を検討している経理担当者や経営者の方は、ぜひ最後までお読みください。
正しい知識を身につけ、スムーズに決算期変更を行うための準備を始めましょう。
決算期変更の手続きと届出期限
① 株主総会での特別決議
決算期の変更を行うには、まず株主総会での特別決議が必要です。通常、定款に事業年度が定められているため、定款変更のための特別決議を経なければなりません。
株式会社の場合、発行済株式総数の過半数の株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。一方、特例有限会社の場合は、議決権の4分の3以上の賛成が必要です。
決算期変更の決議後は、速やかに株主総会議事録を作成しましょう。小規模な会社では、株主総会を開催せずに議事録の作成のみで済ませることもあります。
② 定款の変更
株主総会での特別決議を経て、定款上の事業年度を変更します。事業年度の記載は任意ですが、通常は定款に記載されているため、変更が必要となります。
ただし、事業年度は登記事項ではないため、公証役場での定款認証や法務局での登記は不要です。したがって、定款変更に係る費用は発生しません。
司法書士や行政書士に依頼せずに自社で手続きを行えば、コストをかけずに定款変更ができるでしょう。
③ 税務署への異動届出書の提出
定款変更後は、所轄の税務署に「異動届出書」を提出します。税務署への異動届出書の提出に際して、株主総会議事録の写しの添付は必須ではありませんが、都道府県税事務所や市区町村の役所への提出時には、議事録の写しが必要となる場合があります。各自治体の要件を事前に確認し、適切に対応することが重要です。
届出書の提出先は、所轄税務署だけでなく、都道府県税事務所や市区町村の役所にも提出が必要です。
④ 地方自治体への届出
税務署への届出と同様に、都道府県や市区町村にも決算期変更の届出が必要です。異動届出書と株主総会議事録の写しを添付して、各自治体の定める期限内に提出しましょう。
地方自治体への届出を怠ると、法人住民税や法人事業税等の申告や納税に影響が出る可能性があります。
届出先や届出書の様式は、自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
決算期変更のメリット
① 節税対策の柔軟性
決算期の変更により、利益が大きい月を翌年度に繰り越すことで節税効果を得られる可能性があります。
利益が多く見込まれる月を決算期とすると、その年の税負担が大きくなってしまいます。そこで、利益が多い月を翌年度に含めるように決算期を変更することで、課税所得を分散させ、節税につなげることができるのです。
また、消費税の免税事業者にとっても決算期の変更がメリットになる場合があります。1事業年度の売上高が1,000万円を超えると、翌々事業年度から消費税の課税事業者となります。決算期を変更して免税期間を延長できる可能性があるのです。
② 決算業務の効率化
事業の繁忙期と決算期が重なっている場合、決算期を変更して繁忙期を避けることで、決算業務の効率化を図れます。
決算期には決算書類や申告書の作成、決算予測、節税対策など、多岐にわたる業務が発生します。経理担当者の負担が大きくなり、ミスも起こりやすくなってしまいます。
そこで、決算期を繁忙期以外の時期に変更することで、落ち着いて決算業務に取り組むことができるようになります。経理担当者の負担軽減につながり、正確な決算処理が可能になるでしょう。
③ 資金繰りの改善
決算期を変更することで、納税時期を調整し、資金繰りを改善できる可能性があります。
例えば、売上のピークから2ヶ月後を決算期とすれば、売掛金の回収が進んだタイミングで決算を迎えられます。十分な現預金残高があれば、翌年度に向けた投資や賞与の支給など、資金活用の自由度が高まります。
一方、資金繰りが厳しい時期を決算期としてしまうと、無理に資金を捻出せざるを得なくなります。金融機関からの借入れや、場合によっては赤字決算に陥るリスクもあるのです。
決算期変更のデメリット
① 事業年度の短縮による負担増
決算期の変更により、変更年度の事業年度が1年未満になるため、通常より短い期間で決算業務を行う必要があります。
通常の1年決算に比べ、決算処理や申告、納税などのスケジュールが圧縮されるため、経理担当者の負担が一時的に増大します。
また、会計監査が必要な場合、通常より短い期間で監査を受けなければならず、監査法人との調整も大変になるでしょう。
決算期変更に伴う事務負担の増加は避けられないため、十分な準備と社内の理解を得ておく必要があります。
② 財務データの比較困難
決算期を変更すると、変更前後の事業年度で期間が異なるため、財務データの単純比較ができなくなってしまいます。
例えば、12月決算から6月決算に変更した場合、変更年度の事業年度は6ヶ月間になります。前年度との売上高や利益を単純に比べても、事業活動の実態を正しく把握することは困難です。
事業年度が異なるデータ同士を比較する際は、月次や四半期データを使って補正する等の工夫が必要になります。株主や取引先等のステークホルダーに対しても、決算期変更の影響を丁寧に説明していく必要があるでしょう。
③ 手続きの煩雑さ
決算期の変更には、株主総会の開催や定款変更、税務署等への届出など、一定の手続きが必要になります。
株主総会の開催には、株主への通知や議案の準備、議事録の作成等の事務作業が発生します。定款変更も、変更内容の確定や新旧対照表の作成等が必要です。
また、税務署や都道府県・市区町村への届出では、提出書類の作成や期限管理が求められます。各種手続きを滞りなく進めていくには、十分な準備と社内の協力が欠かせません。
手続き自体は煩雑ですが、会社の財務状況や経営計画に大きな影響を与える決算期の変更は、慎重に検討する必要があるでしょう。
決算期変更に関する注意点
① 事業年度の最長期間
法人税法上、事業年度は1年以内でなければならないと規定されています。つまり、1事業年度の期間は最大で12ヶ月までとされており、1年(12ヶ月)を超える事業年度を設定することはできません。決算期を変更する際は、この点に留意し、適切な事業年度を設定する必要があります。
例えば、12月決算から3月決算に変更する場合、1月から3月までの3ヶ月間を1事業年度とした上で、4月からの1年間を次の事業年度とする必要があります。
変更年度に1年を超える事業年度を設定してしまうと、税務署からの指摘を受ける可能性があります。法令に則った適切な事業年度の設定を心がけましょう。
② 添付書類の準備
都道府県税事務所や市区町村の役所への届出の際は、異動届出書だけでなく、決算期変更を決議した株主総会の議事録の写しも添付する必要がある場合があります。
議事録は、決算期変更の根拠となる重要な書類です。決議内容や出席株主等の情報が正確に記載されているか、しっかりと確認しておきましょう。
また、定款の変更内容が分かる新旧対照表や、変更後の定款の写しを用意しておくことも大切です。各種添付書類を揃えておくことで、スムーズな手続きが可能になるでしょう。
③ 変更のタイミング
決算期の変更は、定時株主総会で決議するのが一般的です。多くの会社は、期末から3ヶ月以内に定時株主総会を開催しています。
決算期変更を検討する際は、株主総会の開催時期を考慮に入れる必要があります。臨時株主総会を開催することも可能ですが、株主の理解を得られるよう、丁寧な説明が求められるでしょう。
また、決算期変更の効力が発生するのは、変更後の事業年度開始日からです。変更に伴う各種手続きは、効力発生日までに完了させておく必要があります。
④ 許認可事業に関する届出
許認可関係で決算期の登録を行っている場合、登録変更が必要です。金融機関をはじめとした利害関係者に対しても、決算期変更の通知を行うべきです。
許認可事業における決算期変更の手続きは、業種や所管官庁によって異なる場合があります。事前に関連法令や手続きを確認し、漏れのないよう対応することが重要です。
また、金融機関との取引においては、決算期変更に伴う各種報告書の提出時期が変更となる可能性があります。金融機関との綿密なコミュニケーションを図り、期限に遅れることのないよう留意しましょう。
⑤ 決算期変更の遡及適用
決算期を変更する場合、決算期の変更を遡及して行うことはできません。そのため、株主総会は変更後の事業年度が開始するまでに決議する必要があります。
例えば、12月決算から6月決算への変更を検討している場合、遅くとも6月末までに株主総会を開催し、決算期変更の決議を行う必要があります。
遡及適用ができないため、決算期変更のタイミングを見誤ると、desired changeが実現できなくなるリスクがあります。十分な準備期間を確保し、適切なスケジュール管理のもと手続きを進めることが肝要です。
⑥ 税務署への異動届出書の提出期限
税務署への異動届出書の提出は、遅滞なく行うこととされています。具体的な期限は明確に規定されていませんが、変更後の事業年度の確定申告が必要となるため、その申告期限までには提出することが望ましいです。
決算期変更後の最初の事業年度については、法人税の確定申告書の提出期限が変更後の事業年度終了の日から2ヶ月以内とされています。異動届出書の提出も、この期限までに行うのが賢明でしょう。
また、都道府県税事務所や市区町村の役所への届出期限も、税務署への届出と同様に、変更後の事業年度開始日から2ヶ月以内とされている場合が多いです。提出期限を過ぎると、罰則はないものの、税務署や自治体からの問い合わせや指導を受ける可能性があります。そのため、期限内に適切な手続きを行うことが重要です。
決算期の変更は、会社の財務や経営に大きな影響を与える重要な意思決定です。メリットとデメリットを慎重に見極め、適切な手続きを踏んで実行する必要があります。各種届出の期限や必要書類の準備、社内外への周知など、漏れのないよう万全の準備を整えましょう。
また、決算期変更に伴う税務上の影響についても、事前に税理士等の専門家に相談し、適切な対策を講じることが賢明です。法人税や消費税、地方税等、様々な税務上の論点が存在します。専門家のアドバイスを得ながら、節税効果の最大化を図ることが肝要でしょう。
さらに、決算期変更が与える経営上の影響についても、十分に検討する必要があります。資金繰りの変化や、事業計画の見直し等、決算期変更が事業運営に及ぼす影響は少なくありません。変更後の事業年度に向けて、綿密な経営計画を策定し、円滑な事業運営を実現することが求められます。
加えて、決算期変更に伴う社内体制の整備も欠かせません。経理部門を中心に、関連部署との連携を密にし、円滑な決算業務の遂行を図る必要があります。事前の十分な準備と、社内の理解と協力が、決算期変更の成功の鍵を握ります。
決算期の変更は、会社の将来を左右する重要な意思決定です。短期的な視点だけでなく、中長期的な観点から、慎重に判断することが肝要です。メリットとデメリットを見極め、適切な手続きを経て、決算期変更を成功に導くことが、経営者の責務といえるでしょう。
決算期変更の届出期限と注意点のまとめ
決算期の変更は、会社の経営に大きな影響を与える重要な意思決定です。
決算期変更の届出は、遅滞なく行うことが求められています。
具体的な期限は定められていませんが、変更後の事業年度の確定申告期限までに提出するのが望ましいでしょう。
決算期の変更には、株主総会での決議や定款変更、税務署等への届出など、様々な手続きが必要です。
それぞれの手続きにおける注意点を押さえ、漏れのないよう進めていくことが肝要です。
また、変更後の事業年度の税務上の取扱いにも注意が必要です。
決算期変更のメリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑えるためには、綿密な計画と適切な実行が求められます。
専門家のアドバイスを得ながら、慎重に検討を重ねることをおすすめします。
項目 | 概要 |
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決算期変更の手続き | 株主総会での決議、定款変更、税務署等への届出が必要 |
届出期限 | 明確な期限はないが、変更後の事業年度の確定申告期限までに提出するのが望ましい |
メリット | 節税対策の柔軟性、決算業務の効率化、資金繰りの改善など |
デメリット | 事業年度の短縮による負担増、財務データの比較困難、手続きの煩雑さなど |
注意点 | 事業年度の最長期間、添付書類の準備、変更のタイミング、許認可事業に関する届出など |