自宅を事務所にして経費にできる?

自宅を事務所として使いながら経費で節税したいけれど、どこまで認められるのか不安に感じていませんか。

千代田区で事業を営む経営者の方なら、都心の高い家賃を少しでも経費にできれば大きな節税効果が期待できます。しかし、按分方法を間違えたり根拠資料を準備していなかったりすると、税務調査で否認されるリスクがあります。実は、自宅を事務所として使う場合、家賃だけでなく光熱費や通信費、さらには減価償却費まで適切に経費計上できる方法があるのです。

この記事では、自宅を事務所にして経費化するための具体的な条件から、面積按分と時間按分の使い分け、青色申告と白色申告の違い、税務調査で指摘されやすいポイントまで、実務に即した知識を網羅的に解説します。ワンルームと持ち家それぞれのシミュレーションも用意しました。

正しい知識を身につけて、安心して節税効果を最大化しましょう。

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自宅を事務所にして経費化する前に知っておくこと

自宅兼事務所とは

個人事業主やフリーランスの方が、自分の住まいの一部を業務スペースとして活用する形態を指します。千代田区で事業を営む経営者の中にも、コスト削減や働き方の柔軟性を重視して、この方法を選択される方が増えています。

住まいの一室をオフィスとして使ったり、自家用車を事業でも使うような場合、プライベートと事業で兼用するケースです。例えば、賃貸マンションの3LDKのうち1室を完全に業務専用として使用する場合や、持ち家の書斎スペースでコンサルティング業務を行う場合などが該当します。

ワンルームのような限られたスペースでも、デスク周辺を業務エリアとして明確に区分すれば、その部分を事業用として扱えます。実際、ITエンジニアやライター、デザイナーといった職種では、パソコン1台あれば仕事ができるため、自宅の一部を仕事場にしている方が多数います。

重要なのは、プライベートな生活空間と業務空間を物理的または時間的に明確に区別できるかどうかです。寝室やリビングで時々パソコンを開く程度では、事業用スペースとは認められにくいのが現実です。

経費化できるための条件

費用のうち事業に関する部分を明確な基準で按分できれば、経費にすることができます。つまり、単に自宅で仕事をしているだけでは不十分で、事業で使っている部分を客観的な根拠をもって証明できることが求められます。

第一の条件は、事業用として使っている実態があることです。事務所スペースとして専用に使っている部屋があるか、業務時間が明確に記録されているかなどが判断材料になります。例えば、6畳の部屋を完全に仕事場として使い、デスクや書棚、プリンターなどを配置して、プライベートでは一切使わない状態であれば、事業用として認められやすくなります。

第二の条件は、合理的な按分基準を設定できることです。面積按分法では、事業で使う部屋の面積が全体の面積に対して占める割合を計算し、その割合に基づいて家賃を按分します。あるいは時間を基準にして、1日24時間のうち何時間を業務に使っているかで計算する方法もあります。

第三の条件は、賃貸契約や所有形態が適切であることです。生計を一にする親族に支払う家賃は必要経費になりません。同居の家族が所有する物件に家賃を支払っている場合、その家賃は経費として認められないため注意が必要です。

加えて、賃貸物件の場合は契約書で事務所利用が禁止されていないか確認しておきましょう。契約違反の状態で経費計上すると、税務署に認められない可能性があります。

自宅を事務所にして経費にできる主な費用項目

家賃・地代・住宅ローン利息・減価償却費

賃貸物件に住んでいる場合、毎月支払う家賃の一部を地代家賃として経費計上できます。88平方メートルの自宅のうち11平方メートルの部屋を事務所として使用しているなら、12.5%が事業に必要な部分といえます。このケースで家賃が月15万円なら、年間で約22万5千円を経費として計上可能です。

持ち家の場合は住宅ローンの元本は経費にできませんが、利息部分は按分して経費計上できます。借入や返済は利益に影響しないため、住宅ローンの元本は経費計上できません。利息部分のみ経費に計上しましょう。月々の返済額が10万円で、そのうち利息が2万円の場合、事業割合が30%なら6千円を経費にできる計算です。

持ち家の場合、建物部分については減価償却費として経費計上します。建物の取得価額を耐用年数で割って毎年の減価償却費を算出し、そこに事業割合を掛けた金額が経費になります。木造住宅なら耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造なら47年といった基準があります。

ただし注意点があります。自宅兼事務所で住宅ローン控除を適用するには、床面積の2分の1以上が住居用でなければなりません。事業用スペースが50%を超えると住宅ローン控除が使えなくなるため、どちらが有利か慎重に検討する必要があります。

固定資産税・保険料

持ち家の場合、固定資産税も按分して経費計上できます。持ち家の固定資産税や火災保険料、地震保険料などについても、経費にすることができます。もちろん、100%ではなく、事業用に使用している部分について按分することになります。

年間の固定資産税が12万円で、事業割合が25%なら3万円を経費にできます。勘定科目は租税公課を使います。

火災保険料についても同様に按分可能です。賃貸物件の場合も持ち家の場合も、事業用部分に対応する保険料は経費として計上できます。年間保険料が2万円で事業割合が30%なら、6千円を損害保険料として経費計上します。

地震保険については少し複雑です。通常、年間10万円の地震保険料を支払っても、5万円分の控除しか受けられませんが、もし、プライベート:事業=60%:40%で経費按分をする場合、プライベート部分は6万円で地震保険料控除5万円、事業用部分は4万円を丸々経費にできます。按分することで、控除枠の上限を超えた部分も有効活用できるメリットがあります。

保険料を按分する際も、契約内容がわかる証書や領収書をしっかり保管しておくことが大切です。

水道光熱費・通信費

電気代、ガス代、水道代といった光熱費も、業務で使用している分は経費になります。1日24時間のうち、仕事をしている時間が8時間だった場合、事業割合は33.3%になります。この割合を毎月の光熱費に掛けた金額を水道光熱費として経費計上します。

月の電気代が8千円なら、約2,666円を経費にできる計算です。ただし、業務内容によって経費として認められる範囲は変わります。自宅で料理教室をしていれば水道代やガス代も経費になりますが、パソコンだけでできる仕事の場合には難しいでしょう。デスクワーク中心の仕事なら、電気代は経費にしやすいですが、ガス代や水道代は認められにくいのが実情です。

通信費については、インターネット回線料金やスマートフォンの料金が対象です。スマホやパソコンを事業とプライベートで兼用している場合、家事按分によって経費にできる金額を算出します。業務専用の携帯電話を持っていれば全額経費にできますが、プライベートと兼用なら使用時間や日数で按分します。

1日8時間の業務時間なら約33%、週5日の業務なら約71%といった具合に、実態に合わせた按分割合を設定します。月額6千円のスマホ代で業務割合が50%なら、3千円を通信費として計上できます。

備品・消耗品・修繕費

デスクやチェア、書棚、照明器具など、業務で使用する家具類は備品として経費計上できます。10万円未満のものは消耗品費として一括で経費にでき、10万円以上のものは固定資産として減価償却します。青色申告者なら30万円未満の資産を年間300万円まで一括償却できる特例もあります。

パソコンやプリンター、複合機なども業務用であれば経費になります。プライベートでも使う場合は按分が必要ですが、業務専用として使っているなら全額経費にできます。

文房具、印刷用紙、トナーカートリッジ、名刺といった消耗品も、業務に必要なものは消耗品費として計上可能です。

自宅兼事務所の修繕費については、事業用部分に対応する金額のみ経費にできます。全体の修繕であれば按分が必要で、事務所として使っている部屋だけの修繕なら全額経費にできるケースもあります。壁紙の張替えや電気設備の修理など、修繕の内容と場所を記録しておきましょう。

車両・交通費

自家用車を業務にも使っている場合、ガソリン代や駐車場代、車検費用、自動車保険料などを按分して経費にできます。1ヶ月のガソリン代が5,000円、週3日車両を使用する場合、按分率は3日÷7日=約42%となり、経費計上できる額は5,000円×42%=2,100円です。

業務での走行距離をしっかり記録することが重要です。運転日報をつけて、いつ、どこへ、何のために車を使ったかを記録しておくと、税務調査で質問されたときにも説明できます。

完全に業務専用の車なら全額経費にできますが、プライベートと兼用している場合は必ず按分してください。通勤用途のみで使っているなら、その走行距離の割合で計算します。

タクシー代や電車代といった公共交通機関の利用も、業務目的であれば旅費交通費として全額経費にできます。取引先との打ち合わせや営業活動、セミナー参加などが該当します。領収書や利用明細をしっかり保管し、目的を記録しておきましょう。

自宅を事務所にして経費を計上する際の家事按分と使用割合

面積按分・時間按分・混合法

面積按分は最もわかりやすい方法です。総面積が100平方メートルで、事業に使用する部屋が20平方メートルの場合、按分比率は20%です。自宅全体の面積に対して、業務専用で使っている部屋の面積がどれくらいかを計算します。

具体的には、賃貸契約書や登記簿に記載されている面積を確認します。60平方メートルのマンションで6畳の部屋を事務所にしている場合、6畳は約10平方メートルなので、按分比率は約16.7%になります。この比率を家賃や光熱費に掛けて経費を算出します。

時間按分は、1日のうち何時間を業務に使っているかで計算します。1日のうち8時間を事業に使用する場合、家賃の3分の1を経費として計上できます。平日は8時間、土日は休みなら週40時間の業務時間となり、1週間168時間に対する割合は約23.8%です。

混合法は、面積と時間の両方を考慮する方法です。例えば、20%の面積を使い、そのスペースを1日の33%の時間(8時間)使用している場合、20%×33%=6.6%といった計算をするケースもあります。ただし、この方法は複雑なため、税理士に相談しながら適切な按分方法を選ぶことをおすすめします。

どの方法を選ぶかは業務の性質によります。専用の部屋があるなら面積按分が適していますし、ワンルームで同じスペースを生活と仕事で使い分けているなら時間按分が妥当です。

根拠資料と記録の残し方

税務調査では、事業割合をどのように求めたのかを聞かれます。事業割合の根拠があいまいであれば、経費を否認される可能性もあります。だからこそ、按分の根拠となる資料をしっかり準備しておく必要があります。

面積按分を使う場合は、賃貸契約書や物件の間取り図、登記簿謄本などを保管しておきます。どの部屋を事務所として使っているか、その面積はどれくらいかを図面上で示せるようにしましょう。写真を撮って、デスクや書棚、パソコンなどの業務用設備が配置されている様子を記録しておくのも有効です。

時間按分を使う場合は、業務日誌やタイムカードのような記録が必要です。毎日の業務開始時刻と終了時刻を記録し、何の作業をしたかも簡単にメモしておきます。手書きのノートでも構いませんし、エクセルやスマホアプリで管理しても良いでしょう。

事業用であることや按分の根拠となる資料が必要です。資料となるものには、賃貸借契約書や家賃を引き落としている通帳などがあげられます。家賃の支払いを証明する通帳のコピーや領収書も、必ず保管してください。

光熱費や通信費についても、毎月の請求書や口座引き落としの記録を残します。クレジットカード払いなら利用明細を保存しておきましょう。

これらの資料は最低7年間保管する必要があります。紙の書類はファイルに綴じて整理し、電子データはバックアップを取って、いつでも提示できる状態にしておくことが大切です。

自宅を事務所にして経費処理するための申告と会計の基本

青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告では、家事按分の扱いに大きな違いがあります。青色申告では、費用のうち事業に関する部分を明確な基準で按分できれば、経費にすることができます。しかし、白色申告では、按分後に事業割合が50%を超える場合のみ、経費にすることが可能です。

例えば、自宅の面積の30%を事務所として使っている場合、青色申告なら30%分を経費にできますが、白色申告では50%未満なので経費として認められません。事業用割合が50%を超えていないと、家事按分による計上ができなくなります。

ただし実務上は、白色申告でも明確に事業用であると証明できれば、50%未満でも按分が認められるケースがあります。とはいえ、国税庁の家事按分の要件では、50%以下・50%超えにかかわらず、支出が明確に事業用である根拠を示せることが求められています。

青色申告には他にもメリットがあります。最大65万円(または55万円、10万円)の特別控除が受けられ、赤字を3年間繰り越せます。家族への給与も専従者給与として全額経費にできます。

青色申告を選ぶには、開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。開業した年の3月15日まで、または開業から2ヶ月以内に申請すれば、その年から青色申告できます。

複式簿記での記帳が求められますが、会計ソフトを使えば簿記の知識がなくても対応可能です。自宅を事務所として使うなら、青色申告を選択するメリットは大きいといえます。

勘定科目と仕訳例

家賃を支払った場合は、勘定科目「地代家賃」を用います。家賃15万円のうち、事業割合20%の3万円を経費にする場合の仕訳は次のようになります。

借方:地代家賃 30,000円 / 貸方:現金 30,000円
借方:事業主貸 120,000円 / 貸方:現金 120,000円

事業主貸は、プライベート部分の支出を処理する勘定科目です。全額を一旦現金や普通預金から支払い、そのうち事業用部分を地代家賃、プライベート部分を事業主貸として仕訳します。

水道光熱費の場合も同様です。電気代8千円で事業割合33%なら、約2,640円を水道光熱費として計上します。

借方:水道光熱費 2,640円 / 貸方:普通預金 2,640円
借方:事業主貸 5,360円 / 貸方:普通預金 5,360円

通信費、損害保険料、車両費なども同じ考え方で仕訳します。按分計算は会計ソフトの家事按分機能を使えば自動で処理できるため、手間を大幅に削減できます。

減価償却費の仕訳は少し複雑です。建物の取得価額が3,000万円、耐用年数47年、事業割合30%の場合、年間の減価償却費は約19万1千円です。

借方:減価償却費 191,000円 / 貸方:建物 191,000円

ただし、事業を始める前から所有していた建物の場合、経過年数分の減価償却を差し引いてから計算する必要があります。

確定申告書での記載ポイント

確定申告書の収支内訳書(白色申告)または青色申告決算書に、経費を記載します。地代家賃の欄には、按分後の事業用金額だけを記入します。

青色申告決算書の3ページ目には、減価償却費の計算明細があります。建物や車両など、減価償却資産ごとに取得価額、耐用年数、償却方法、本年分の償却額を記載します。事業専用割合の欄に按分率を記入すれば、自動的に経費算入額が計算されます。

地代家賃の内訳欄には、支払先の氏名や住所、支払金額(年間)を記入します。賃貸物件なら大家さんや管理会社の情報を、持ち家なら所有者(自分)の情報を記載します。

水道光熱費や通信費は、それぞれの勘定科目ごとに年間合計額を記入します。按分計算の根拠は別途メモとして保管しておき、税務調査で質問されたときに説明できるようにしておきます。

青色申告決算書には貸借対照表も含まれます。建物を事業用固定資産として計上している場合、資産の部に未償却残高を記載します。住宅ローンがあれば、事業用部分に対応する残高を負債の部に記入します。

確定申告書Bの第二表には、事業所の所在地を記入する欄があります。自宅兼事務所なら自宅の住所を記載しますが、登記上の本店所在地が別にある法人化を検討している場合は、税理士に相談しながら適切に記載しましょう。

自宅を事務所にして経費化する際の注意点とよくある質問

家事按分割合が高すぎる場合

事業用の比率を高くすれば、経費も増え、節税につながりますが、実態を反映しない比率で申告すれば、税務署に調査してくれとお願いしているに等しくなります。例えば、50平方メートルのワンルームマンションで、事業割合を80%と申告するのは現実的ではありません。

寝室やキッチン、浴室といった生活に不可欠なスペースを考えると、ワンルームなら事業割合は20〜30%程度が妥当です。2LDKで1室を完全に事務所として使っているなら、30〜40%程度が一般的な範囲といえます。

自宅の総面積のうち、事業用として使用しているスペースが1割以下の場合、家事按分ができない可能性があります。逆に、あまりにも高い割合を設定すると、税務署から疑問を持たれます。

実態に即した割合を設定することが何より重要です。無理に経費を増やそうとして高い割合を設定するのではなく、実際に業務で使っている範囲を正直に計算しましょう。

もし事業割合を高めたいなら、専用の部屋を確保する、業務時間を増やす、業務に必要な設備を充実させるといった実態面での対応が先決です。

税務調査で指摘されやすいポイント

水道光熱費等の家事関連費については、合理的な基準を設けておきましょう。例えば、自宅兼事務所の場合、事務所として利用している敷地割合や、概ね1ヶ月内で事務所として利用している時間を算出し、その割合分のみを事業上の経費として計上しましょう。

税務調査では、按分割合の根拠が不明確な場合に指摘を受けやすくなります。按分割合の根拠が不明確な場合は、経費計上の正当性が疑われます。何となく30%と決めたのではなく、面積を実測して計算した、業務時間を記録して算出したといった明確な理由が必要です。

建設業など、通常の業務は外で行っており、自宅兼事務所では請求書の作成程度しか利用していない場合には注意が必要です。業務の大半を外で行っているのに、自宅の経費を大きく計上していると、整合性を疑われます。

業種によって認められる経費の範囲が違う点も理解しておきましょう。ITエンジニアやライターのように自宅で完結する仕事なら、光熱費や通信費の按分も認められやすいです。一方、外回りの営業職や建設業のように、自宅での業務時間が少ない場合は、按分割合を低めに設定する必要があります。

親族への家賃支払いも注意ポイントです。事務所の家賃を同一生計の家族・親族に払っている場合は経費計上できません。同居している親が所有する物件を借りて家賃を払っても、経費にはなりません。

契約内容の確認も重要です。賃貸契約で事務所利用が禁止されているのに経費計上していると、契約違反を理由に否認される可能性があります。

自宅を事務所にして経費化するケース別シミュレーション

ワンルームで一部を事務所利用する場合

都内のワンルームマンション(30平方メートル、家賃10万円)で、フリーランスのWebデザイナーとして働いているケースを考えます。部屋の約4分の1にあたる7.5平方メートルのスペースに、デスクとパソコン、書棚を配置して業務専用エリアとしています。

面積按分では25%(7.5÷30)となります。家賃10万円の25%は2万5千円です。年間で30万円を地代家賃として経費計上できます。

時間按分で計算する方法もあります。平日は9時から18時まで8時間、休憩1時間を除いて7時間業務をしています。週5日なので週35時間、1週間168時間に対する割合は約20.8%です。この場合、年間の経費は約25万円になります。

どちらの方法を選ぶかは実態に合わせて判断します。このケースでは面積按分の25%が妥当でしょう。

電気代が月8千円なら、25%の2千円が経費です。年間2万4千円を水道光熱費として計上します。インターネット回線料金が月5千円で業務専用なら、全額の年間6万円を通信費にできます。

スマートフォンは業務とプライベート兼用で月7千円なら、業務割合を50%として月3,500円、年間4万2千円を通信費に計上します。

火災保険料が年間1万5千円なら、25%の3,750円を損害保険料として経費にできます。

このワンルームのケースでは、年間の経費合計は以下のようになります。

– 地代家賃:30万円
– 水道光熱費:2万4千円
– 通信費:10万2千円(ネット6万円+スマホ4万2千円)
– 損害保険料:3,750円

合計で約43万円の経費を計上できます。所得税率が20%なら約8万6千円、住民税を含めると約13万円の節税効果が期待できる計算です。

注意点として、ワンルームの場合は事業割合を高く設定しすぎないことです。生活スペースも確保されているはずなので、30%を超える按分は慎重に検討しましょう。

持ち家で一室を事務所化する場合

3LDKの持ち家マンション(80平方メートル、購入価額3,000万円、築5年)で、コンサルタント業を営んでいるケースです。1室(12平方メートル)を完全に事務所として使用し、デスク、書棚、応接セット、複合機などを配置しています。

面積按分では15%(12÷80)が事業割合です。

住宅ローンの残高が2,500万円で、月々の返済が10万円(うち利息2万円)の場合、利息部分の15%である月3千円、年間3万6千円を支払利息として経費計上できます。

建物の減価償却費を計算します。鉄筋コンクリート造で耐用年数47年、購入価額のうち建物部分が2,000万円とすると、年間の償却額は約42万5千円です。これの15%である約6万4千円を減価償却費として経費にできます。

固定資産税が年間15万円なら、15%の2万2,500円を租税公課として計上します。

火災保険料が年間2万円、地震保険料が年間3万円の場合、事業割合15%を掛けると、火災保険料3千円、地震保険料4,500円を損害保険料として経費にできます。残りのプライベート部分は、確定申告で地震保険料控除として最大5万円まで所得控除を受けられます。

電気代が月1万2千円で、業務時間を基に30%を事業用とすると、月3,600円、年間4万3,200円を水道光熱費として計上できます。ガス代と水道代は、デスクワーク中心の業務なので按分が難しく、計上を見送るのが無難です。

インターネット回線料金とスマートフォン代は、ワンルームの例と同じく年間10万2千円を通信費として計上します。

持ち家のケースでは、年間の経費合計は以下のようになります。

– 支払利息:3万6千円
– 減価償却費:6万4千円
– 租税公課:2万2,500円
– 損害保険料:7,500円
– 水道光熱費:4万3,200円
– 通信費:10万2千円

合計で約27万5千円です。ワンルームより少なく見えますが、これは家賃がない分です。実際には住宅ローン控除も併用できる可能性があるため、トータルでの節税効果を検討する必要があります。

持ち家の取得費用の総額によっては、経費として計上するよりも、住宅ローン控除を受けた方が、節税につながる可能性があります。事業割合が15%程度なら、床面積の85%が住居用なので住宅ローン控除の要件を満たします。

住宅ローン控除で年間30万円程度の税額控除が受けられるなら、自宅経費を計上するより有利です。どちらが得かは、ローン残高、所得金額、事業割合などによって変わるため、税理士に相談して最適な方法を選択しましょう。

このケースのように、持ち家で一室を完全に事務所化している場合は、按分の根拠が明確なため税務調査でも説明しやすくなります。部屋の写真を撮影し、業務用の設備が配置されている様子を記録しておくと安心です。

自宅を事務所にして経費化する際の最終チェックポイント

自宅の一部を事業用として経費計上する前に、以下のポイントを必ず確認してください。

まず、事業実態があるかどうかです。開業届を提出し、実際に継続的な事業活動を行っていることが前提です。副業程度の収入で、自宅経費を大きく計上すると不自然に映ります。事業収入と経費のバランスを考えましょう。

次に、按分方法が合理的かどうかです。面積按分なら実測した数値を、時間按分なら業務日誌の記録を根拠として準備します。何となく決めた割合ではなく、客観的に説明できる基準を設定してください。

賃貸契約や所有関係も確認します。生計を一にする親族に支払う家賃は必要経費になりません。同居家族が所有する物件への家賃は経費にならないため、別居の親族から借りるか、第三者から借りる必要があります。

賃貸契約で事務所利用が禁止されていないかもチェックしましょう。契約書を確認し、事務所利用が認められている、または制限されていないことを確認してください。

青色申告か白色申告かによって、経費計上できる範囲が変わります。青色申告は使用割合が60%でも20%でも、事業用の根拠があれば家事按分が可能です。一方、白色申告は50%超の使用割合、または使用割合の区別が明確でないと、経費に認められない可能性があります。自宅経費をしっかり計上したいなら、青色申告を選択することをおすすめします。

根拠資料の保管状況も確認してください。賃貸契約書、間取り図、業務日誌、光熱費の請求書、通信費の明細など、按分の根拠となる書類を7年間保管します。紙の書類はファイリングし、電子データはバックアップを取って、いつでも提示できるようにしておきます。

住宅ローン控除との関係も検討します。持ち家で住宅ローンを利用している場合、事業割合が50%を超えると住宅ローン控除が使えなくなります。どちらが有利かを計算し、最適な選択をしましょう。

会計処理の方法も確認します。会計ソフトを使って正確に記帳し、按分計算も自動化すると手間が省けます。勘定科目を正しく使い分け、事業主貸でプライベート部分を区分します。

業種と経費の整合性もチェックポイントです。建設業など、通常の業務は外で行っており、自宅兼事務所では請求書の作成程度しか利用していない場合には注意が必要です。業務の大半を外で行っているなら、自宅経費の按分割合は低めに設定するのが妥当です。

最後に、税理士への相談を検討しましょう。適切な事業用按分比は、なかなか法人や個人事業主の方だけではわかりません。税務調査などに詳しい税理士など専門家の意見を聞き、適正かつ節税につながる持ち家の経費を算出してください。

特に千代田区で事業を営む経営者の方なら、地域の事情に詳しい税理士を見つけることが重要です。都心部の物件は家賃が高額なため、適切に経費計上できれば大きな節税効果が期待できます。一方で、按分方法を誤ると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。

千代田区税理士などの専門家のサポートを受けながら、実態に即した適切な経費計上を行い、安心して事業に集中できる環境を整えましょう。自宅を事務所として活用することは、コスト削減と働き方の柔軟性を両立できる賢い選択です。正しい知識と適切な処理で、そのメリットを最大限に活かしてください。

>>確定申告における家事消費とは?

自宅を事務所にして経費化するまとめ

自宅を事務所にして経費化するためには、事業用として使っている実態を明確にし、合理的な按分基準を設定することが何より大切です。面積按分や時間按分といった方法で事業用の割合を計算し、家賃や光熱費、通信費などを適切に経費計上できます。

青色申告を選択すれば事業割合が50%未満でも経費にできますが、白色申告では50%を超える必要があるため、青色申告の方が有利です。賃貸物件なら家賃、持ち家なら住宅ローンの利息や減価償却費を按分して計上します。

税務調査では按分割合の根拠を必ず確認されるため、賃貸契約書や間取り図、業務日誌といった資料を7年間しっかり保管しておきましょう。実態に即した適切な按分割合を設定し、根拠資料を準備しておけば、安心して節税効果を得られます。

項目 賃貸物件 持ち家 按分方法
家賃・地代 ◎ 全額按分可 面積按分
住宅ローン利息 ◎ 按分可 面積按分
減価償却費 ◎ 按分可 面積按分
固定資産税 ◎ 按分可 面積按分
火災保険料 ◎ 按分可 ◎ 按分可 面積按分
電気代 ◎ 按分可 ◎ 按分可 時間按分
ガス代・水道代 △ 業種による △ 業種による 時間按分
通信費 ◎ 按分可 ◎ 按分可 時間按分
車両関連費 ◎ 按分可 ◎ 按分可 走行距離按分
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