税理士に頼らず自分で法人決算を行うことはできるのでしょうか?
経理の知識が乏しい経営者の方は、決算の際に税理士に丸投げしてしまうケースも少なくありません。しかし、税理士報酬は小さな負担ではなく、コスト削減のために自分で決算まで行いたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、税理士なしで法人決算を行う際に必要な知識から、具体的な手順、注意点まで丁寧に解説します。
会計や税務の知識に自信がない方でも、本記事を読めば法人決算を自力で乗り切るためのポイントが身につくはずです。
これまでは税理士任せだった法人決算。しかし、本記事を読めば、あなたも税理士なしで決算に挑戦できるようになるでしょう。
法人決算を自分の力でやり遂げられる日が、もうすぐそこまで来ています。
法人決算を税理士なしで行うための基本知識
税理士なしで決算は可能か
法人の決算は、税理士に依頼せずに自分で行うことも可能です。会社法や法人税法などの法律で、決算書類の作成が義務付けられていますが、必ずしも税理士の関与が必須とはなっていません。ただし、法人決算は個人事業主の確定申告に比べて複雑で、専門的な知識が求められるため、多くの企業では税理士に依頼しているのが実情です。
税理士なしで決算を行う場合、経営者自身や経理担当者が会計や税務に関する十分な知識を持っていることが重要です。日々の記帳から決算書の作成、税金の申告・納付まで、一連の業務を正確に行う必要があります。また、税制改正などにも常に注意を払い、最新の情報をアップデートしていく必要があります。
自力で決算を行うメリットとしては、税理士への報酬を節約できる点が挙げられます。一方で、決算業務に多くの時間と労力を割くことになるため、本業への影響も考慮する必要があります。また、専門家のチェックが入らないことで、書類の不備やミスが生じるリスクも高まります。
自力で行うメリットとデメリット
法人決算を税理士に依頼せず、自分で行うメリットは主に以下の2点です。
1. コスト削減:税理士への報酬を節約できる
2. 経営状況の把握:決算書の作成を通じて、自社の財務状況や経営成績を詳細に理解できる
一方で、デメリットとしては以下のような点が挙げられます。
1. 時間と手間:決算業務に多くのリソースを割く必要があり、本業に支障をきたす可能性がある
2. ミスのリスク:専門的な知識不足から、書類の不備や計算ミスが生じやすい
3. 税務調査対応の難しさ:税務署からの指摘や調査に、自力で対応しなければならない
4. 節税対策の限界:税理士からのアドバイスがないため、適切な節税策を講じられない可能性がある
税理士なしで決算を行うか否かは、自社の規模や業務内容、経理担当者の知識レベルなどを総合的に勘案して、慎重に判断する必要があります。リスクを十分に理解したうえで、メリットがデメリットを上回ると判断できる場合には、自力での決算も選択肢の一つとなるでしょう。ただし、万が一の事態に備えて、税理士との顧問契約は結んでおくことをおすすめします。
法人決算を自分で行う具体的な手順
日々の取引の記帳
法人決算を自分で行う際、最も重要なのは日々の取引を正確に記帳することです。記帳とは、日々の取引内容を仕訳帳に記録し、総勘定元帳に転記する一連の作業を指します。この記帳が適切に行われていなければ、正確な決算書を作成することはできません。
記帳を行う際は、取引の日付、内容、金額、勘定科目などを漏れなく正しく記録する必要があります。現金の出納、銀行取引、売上、仕入れ、経費など、あらゆる取引を網羅的に記帳しなければなりません。また、証憑書類(請求書、領収書など)と照合し、記帳内容に間違いがないかをチェックすることも重要です。
日々の記帳は手書きの帳簿で行う方法もありますが、現在ではクラウド会計ソフトを利用するのが一般的です。会計ソフトを活用すれば、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で取引データを取り込んだり、勘定科目を自動で仕訳したりできるため、記帳の手間を大幅に省くことができます。
試算表の作成と確認
記帳が完了したら、次は試算表を作成します。試算表とは、総勘定元帳の各勘定科目の残高を一覧表にまとめたものです。借方と貸方の合計金額が一致していることを確認し、記帳や転記に誤りがないかをチェックします。
試算表の作成手順は以下のとおりです。
1. 総勘定元帳の各勘定科目の期末残高を集計する
2. 集計した金額を借方と貸方に分けて一覧表に記入する
3. 借方と貸方の合計金額が一致していることを確認する
試算表の借方と貸方の合計金額が一致しない場合は、記帳や転記の誤りが発生している可能性があります。その際は、総勘定元帳と照合して誤りを特定し、修正する必要があります。
試算表の作成・確認も、会計ソフトを利用すれば自動で行うことができます。手作業で行う場合と比べて、作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、計算ミスも防ぐことができるでしょう。
決算整理仕訳の実施
試算表の確認が終わったら、決算整理仕訳を行います。決算整理仕訳とは、決算時に行う特殊な仕訳のことで、主に以下のような項目について行います。
1. 減価償却:固定資産の価値の減少を費用として計上する
2. 棚卸資産の評価:期末時点の在庫を適切に評価し、売上原価を算出する
3. 引当金の計上:将来の費用や損失に備えて、引当金を計上する
4. 未収入金・未払金の計上:期末時点で発生しているが、まだ現金の受け渡しが行われていない取引を計上する
決算整理仕訳を行う際は、各項目の計算方法や会計基準を正しく理解していることが重要です。減価償却費の計算、棚卸資産の評価方法の選択、引当金の計上基準など、専門的な知識が求められる部分も多いため、自力で行う場合は入念な準備が必要となります。
決算整理仕訳は、試算表の数値を修正するための仕訳になるため、貸借のバランスが崩れないように注意が必要です。また、決算整理仕訳を行った後は、再度試算表を作成して、整合性を確認しておくことが重要です。
決算整理仕訳の具体的な方法については、会計ソフトのマニュアルや会計の専門書などを参考にすると良いでしょう。自力での対応が難しい場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
決算書類の作成
決算整理仕訳が完了したら、決算書類を作成します。法人の決算で作成が必要な主な書類は以下のとおりです。
1. 貸借対照表(B/S):期末時点の資産、負債、純資産の状態を表す財務諸表
2. 損益計算書(P/L):一定期間の収益と費用を表す財務諸表
3. 株主資本等変動計算書:株主資本(資本金、資本剰余金、利益剰余金)と評価・換算差額等の変動を表す計算書
4. 個別注記表:計算書類の注記事項を一覧にまとめた書類
これらの決算書類は、会社法に基づいて作成する必要があります。決算書類の作成には、会計の専門知識だけでなく、会社法の規定についても理解しておく必要があります。
各書類の具体的な作成方法は以下のとおりです。
– 貸借対照表:試算表の勘定科目を資産、負債、純資産に分類し、それぞれの合計金額を計算する
– 損益計算書:試算表の勘定科目を売上高、売上原価、販売費及び一般管理費などに分類し、それぞれの合計金額を計算する
– 株主資本等変動計算書:期首残高、当期変動額、期末残高を計算し、変動事由ごとに記載する
– 個別注記表:重要な会計方針、減価償却資産の償却方法、引当金の計上基準などを記載する
決算書類の作成も、会計ソフトを利用すれば自動で行うことができます。手作業で行う場合は、計算ミスや転記ミスに十分注意し、複数人でチェックを行うことが重要です。
法人税申告書の作成と提出
決算書類の作成が完了したら、次は法人税の申告書を作成します。法人税の申告書は、決算書類の数値をもとに、所得金額や税額を計算し、所定の様式に記入します。
主な記載事項は以下のとおりです。
1. 所得金額の計算:収益から費用を差し引いて、所得金額を計算する
2. 所得金額の調整:交際費、寄附金、受取配当等の益金不算入額や損金不算入額を調整する
3. 税額の計算:所得金額に税率を乗じて、税額を計算する
4. 申告書の作成:計算結果を所定の様式に記入する
法人税の申告書の作成は非常に複雑で、専門的な知識が必要とされるため、税理士に依頼するケースが多いのが実情です。自力で行う場合は、国税庁のホームページなどで提供されている記載例や記載要領を参考に、慎重に作成する必要があります。
作成した申告書は、決算期末から2ヶ月以内に、所轄の税務署に提出しなければなりません。申告書の提出は、書面での提出とe-Taxを利用したオンライン提出の2つの方法があります。オンライン提出の場合は、事前の準備が必要となるため、余裕をもって手続きを進めることが重要です。
税金の納付
申告書の提出が完了したら、最後は税金の納付を行います。法人税の納付期限は、原則として決算期末から2ヶ月以内です。
納付方法は以下の3つがあります。
1. 税務署の窓口で現金納付
2. 銀行や郵便局の窓口で納付書による納付
3. インターネットバンキングやダイレクト納付を利用したオンライン納付
納付期限までに税金を納めないと、延滞税が課されるため注意が必要です。資金繰りに余裕がない場合は、税務署に相談して納付期限の延長や分割納付の相談をすることも可能です。
なお、法人税以外にも、地方法人税、法人事業税、法人住民税、消費税などの税金についても、それぞれの納付期限までに納税する必要があります。事前に納付スケジュールを確認し、納め忘れのないように注意しましょう。
決算に必要な書類一覧
貸借対照表
貸借対照表(バランスシート)は、決算日時点における企業の財政状態を表す書類です。資産、負債、純資産の3つの要素で構成され、資産と負債・純資産の合計額が一致することが特徴です。
主な記載項目は以下のとおりです。
– 資産:現金預金、売掛金、棚卸資産、有形固定資産、無形固定資産など
– 負債:買掛金、短期借入金、長期借入金、社債、退職給付引当金など
– 純資産:資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式など
貸借対照表は、流動資産・固定資産、流動負債・固定負債などに分類して表示します。また、前期末の金額と当期末の金額を並べて記載し、増減を比較できるようにするのが一般的です。
貸借対照表の見方としては、流動比率(流動資産÷流動負債)や自己資本比率(自己資本÷総資本)などの財務指標を算出することで、企業の安全性や健全性を評価することができます。
損益計算書
損益計算書(P/L)は、一定期間の企業の経営成績を表す書類です。売上高から売上原価、販売費及び一般管理費などを差し引いて、最終的な利益を算出します。
主な記載項目は以下のとおりです。
– 売上高:主な営業活動によって得た収益
– 売上原価:売上高に対応する商品の仕入原価や製造原価
– 販売費及び一般管理費:人件費、広告宣伝費、地代家賃、減価償却費など
– 営業外収益・費用:受取利息、支払利息など、営業活動以外で発生した収益と費用
– 特別利益・損失:固定資産売却益、減損損失など、臨時的に発生した利益と損失
損益計算書では、売上総利益(売上高-売上原価)、営業利益(売上総利益-販売費及び一般管理費)、経常利益(営業利益+営業外収益-営業外費用)、当期純利益(経常利益+特別利益-特別損失-法人税等)の各段階の利益を算出します。
損益計算書の見方としては、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)や売上高経常利益率(経常利益÷売上高)などの収益性を表す指標や、売上高販管費率(販売費及び一般管理費÷売上高)などのコスト管理の指標を算出し、経営効率を評価することができます。
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、一定期間の株主資本(資本金、資本剰余金、利益剰余金)および評価・換算差額等の増減内容とその理由を表す計算書類です。
主な記載項目は以下のとおりです。
– 資本金:株主からの出資金
– 資本剰余金:資本金を増加させる取引によって生じた剰余金
– 利益剰余金:企業の利益の蓄積額
– 自己株式:企業が保有する自社の株式
– 評価・換算差額等:その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益など
株主資本等変動計算書では、前期末残高、当期変動額、当期末残高を記載し、その変動事由を明らかにします。これにより、株主資本がどのように変動したのかを詳細に把握することができます。
株主資本等変動計算書の見方としては、利益剰余金の増減内容を確認することで、企業の利益配分政策や内部留保の状況を把握することができます。また、自己株式の増減によって、資本政策の方向性を知ることもできます。
個別注記表
個別注記表は、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)の注記事項を一覧にまとめた書類です。計算書類本体では詳細に記載しきれない事項や、補足的な情報を開示するために作成します。
主な記載項目は以下のとおりです。
– 重要な会計方針に係る事項:資産の評価基準及び評価方法、固定資産の減価償却の方法など
– 貸借対照表に関する注記:有形固定資産の減価償却累計額、引当金の明細など
– 損益計算書に関する注記:関係会社との取引高、減損損失の内容など
– 株主資本等変動計算書に関する注記:発行済株式の種類及び総数、配当に関する事項など
– その他の注記:リースにより使用する固定資産、金融商品に関する事項、税効果会計に関する事項など
個別注記表の記載内容は、会社計算規則などの法令に基づいて定められています。企業の実態に即して、適切な注記を行うことが求められます。
個別注記表の開示によって、計算書類の数値の背景にある詳細な情報を利用者に提供することができます。これにより、企業の財務状態や経営成績について、より深く理解することが可能となります。
法人税申告書
法人税の確定申告に必要な書類の一つが、法人税申告書です。法人税申告書は、様式が定められており、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
法人税申告書の主な記載事項は以下のとおりです。
– 申告区分:確定申告、中間申告、修正申告など
– 法人の概況:法人名、所在地、資本金など
– 所得金額の計算:損益計算書の当期純利益から、損金不算入項目や益金不算入項目を調整して算出
– 税額の計算:所得金額に税率を乗じて算出
– 納税額の計算:税額から、予定納税額や源泉所得税などを差し引いて算出
– 添付書類の有無:貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表など
法人税申告書は、決算書から得られた情報をもとに作成します。そのため、決算書の数値と申告書の数値に矛盾がないように注意が必要です。
法人税申告書の提出期限は、原則として事業年度終了日から2ヶ月以内です。期限までに提出しないと、無申告加算税や延滞税が課されるため、注意が必要です。
法人税申告書の作成には専門的な知識が必要とされるため、自力で作成することは容易ではありません。税理士に依頼するか、会計ソフトの機能を活用するなどして、適切に作成することが重要です。
勘定科目内訳明細書
勘定科目内訳明細書は、法人税の申告に際して、貸借対照表および損益計算書の勘定科目の内訳を明らかにするために作成する書類です。
主な記載項目は以下のとおりです。
– 預金の内訳:預金種類ごとの内訳、期末残高など
– 売掛金(受取手形)の内訳:取引先ごとの内訳、期末残高など
– 棚卸資産(商品、製品、原材料等)の内訳:品目ごとの内訳、期末残高など
– 固定資産の内訳:資産の種類ごとの取得価額、減価償却累計額、期末残高など
– 買掛金(支払手形)の内訳:取引先ごとの内訳、期末残高など
– 借入金の内訳:借入先ごとの内訳、期末残高など
– 売上(仕入)の内訳:取引先ごとの内訳、取引高など
勘定科目内訳明細書は、法人税の申告に必要な情報を税務署に提供するために作成します。税務調査の際には、勘定科目内訳明細書をもとに、取引の実在性や適正性が確認されることもあります。
勘定科目内訳明細書の様式は、法令等で定められていませんが、税務署から指導されることがあります。企業の実態に即して、適切な内容で作成することが重要です。
勘定科目内訳明細書の作成には、日々の取引データが必要となります。会計ソフトを活用するなどして、効率的に作成することが望まれます。
事業概況説明書
事業概況説明書は、法人税の申告書に添付して提出する書類の一つです。事業の概要や経営状況を説明することで、税務署に対して企業の実態を正しく伝えることを目的としています。
主な記載項目は以下のとおりです。
– 企業の概要:事業の種類、沿革、役員に関する事項など
– 株主等に関する事項:株主数、大株主上位10名、役員借入金など
– 事業の状況:事業の内容、主要な事業所、使用人の状況など
– 直前3期分の財務状況:売上高、営業利益、経常利益、当期純利益など
– 会社の現況:直前期末の総資産額、売上高、従業員数など
事業概況説明書には、企業の特色や強みなど、財務諸表だけでは伝えきれない情報を記載することができます。また、経営上の課題や今後の事業展開についても言及することで、企業の将来性をアピールすることも可能です。
事業概況説明書の様式は、法令等で定められていませんが、記載項目のポイントを押さえつつ、自社の実態に即した内容で作成することが重要です。図表やグラフを用いるなど、わかりやすく説明することを心がけましょう。
事業概況説明書は、税務調査の際の重要な資料となります。税務署との対話を円滑に進めるためにも、正確かつ丁寧な記載を心がける必要があります。
税理士なしで決算を行う際の注意点
会計・税務知識の必要性
法人決算を税理士なしで自力で行う際には、まず会計と税務に関する十分な知識が必要となります。日々の取引の仕訳から決算整理、税効果会計の適用、税額の計算に至るまで、幅広い専門知識が求められるからです。
具体的には、以下のような知識が必要となります。
– 企業会計原則や会計基準に関する知識
– 勘定科目の性質および仕訳方法に関する知識
– 財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)の構造および作成方法に関する知識
– 税法(法人税法、消費税法、地方税法など)に関する知識
– 税務申告書の様式および記載方法に関する知識
– 税効果会計や減価償却など、税務固有の処理に関する知識
これらの知識は、簿記の資格取得や会計・税務の専門書の学習によって身につけることができます。ただし、実務に適用するにはさらなる実践的な学習が必要となるでしょう。
また、税法は毎年のように改正されるため、最新の情報を常にアップデートしていく必要があります。専門誌の購読や講習会への参加など、継続的な学習が欠かせません。
会計・税務知識が不十分なまま法人決算に臨むと、処理の誤りや申告書の不備につながるリスクがあります。自力での決算に不安がある場合は、税理士への相談も検討するべきでしょう。
作業に要する時間と労力
税理士なしで法人決算を行う場合、膨大な時間と労力が必要となります。日々の記帳から決算整理、申告書の作成まで、すべての作業を自力で行わなければならないからです。
具体的な作業としては、以下のようなものがあります。
– 日々の取引の記帳(仕訳)
– 帳簿(総勘定元帳、補助簿など)の作成
– 現金、預金、売掛金、買掛金などの残高確認
– 棚卸資産の実地棚卸および評価
– 固定資産の取得、売却、除却処理および減価償却費の計算
– 引当金の計上および戻入処理
– 決算整理仕訳(未収収益、未払費用、償却資産など)
– 財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)の作成
– 勘定科目内訳明細書などの附属明細書の作成
– 法人税、消費税、地方税などの申告書の作成
– 各種税金の納付手続き
これらの作業を期限までに完了させるには、相当の時間と労力を要します。特に決算期は、通常の業務と並行して決算業務を行う必要があるため、かなりの負荷がかかります。
また、作業の正確性を期すためには、複数人でのチェック体制を敷くことが望ましいですが、人員に余裕のない中小企業などでは難しいのが実情でしょう。
税理士に依頼する場合と比べると、コストを抑えられるメリットはありますが、自社の人的資源を決算業務に割くことによる機会損失も考慮する必要があります。自力での決算が経営に与える影響を十分に見極めたうえで、税理士への依頼も視野に入れることをおすすめします。
税務調査への対応リスク
税理士なしで法人決算を行った場合、税務調査への対応が課題となります。税務調査とは、税務署が申告内容の適正性を確認するために行う調査です。帳簿書類や申告書の不備、税法解釈の誤りなどがあると、追徴課税や加算税などのペナルティを受けるリスクがあります。
税務調査では、以下のような事項が主な確認ポイントとなります。
– 収益および費用の計上漏れ、計上時期の適正性
– 現金取引、関連当事者間取引の適正性
– 棚卸資産の評価の適正性
– 減価償却費の計算の適正性
– 引当金の計上の適正性
– 税効果会計の適用の適正性
– 国外関連取引の適正性
これらの確認事項について、税務署の指摘に対して適切に説明し、必要に応じて資料を提示しなければなりません。しかし、税務知識が不十分だと、指摘内容を理解することが難しく、適切な対応ができない恐れがあります。
また、税務調査の事前通知から実地調査、その後の問い合わせ対応まで、かなりの時間と労力を要します。自力で対応することによる業務への影響も考慮する必要があります。
税理士に依頼している場合は、税務調査の立会いや指摘事項への対応を税理士に任せることができます。税理士は税法に精通しているため、税務署との交渉を有利に進められる可能性が高くなります。
税務調査のリスクを軽減するためには、日頃から帳簿書類を整理し、適正な会計処理を行うことが重要です。それでも自力での対応に不安がある場合は、税理士への相談を検討しましょう。
節税対策の限界
法人税の節税は、企業経営において重要な課題の一つです。しかし、税理士なしで法人決算を行う場合、節税対策に限界があることを認識する必要があります。
税理士は、税法に精通しているだけでなく、多くの企業の決算業務に携わっているため、幅広い節税ノウハウを蓄積しています。決算時に適用できる特殊な税務処理や、業種特有の税制優遇措置など、専門的な知識に基づいた節税アドバイスを得られるのが税理士に依頼するメリットです。
一方、税理士なしで決算を行う場合、税法の規定の範囲内で節税対策を講じることはできますが、高度な節税スキームを立案・実行することは容易ではありません。例えば、以下のような一般的な節税対策は自力でも実施可能です。
– 交際費等の損金不算入額の管理
– 貸倒引当金や賞与引当金などの適正な計上
– 少額減価償却資産の一括償却
– 欠損金の繰越控除や繰戻還付の適用
– 中小企業向け税制優遇措置の適用
しかし、これらの対策を講じたとしても、節税効果には限界があります。企業規模が大きくなるほど、より高度な節税対策が必要となるでしょう。
また、節税対策を過度に行うと、税務署から不適切な税務処理とみなされ、追徴課税を受けるリスクもあります。税法の解釈を誤ると、予期せぬ税負担を強いられる可能性があるのです。
税理士による節税アドバイスは、税務リスクとのバランスを考慮したものであり、長期的な視点から企業の利益に貢献します。自力での節税対策に限界を感じた場合は、税理士への相談を検討することをおすすめします。
会計ソフトの活用方法
会計ソフトの選び方
法人決算を税理士なしで行う際には、会計ソフトの活用が欠かせません。会計ソフトを使えば、日々の記帳から決算書の作成まで、一連の業務を効率的に行えるからです。
会計ソフトを選ぶ際は、以下のようなポイントを考慮しましょう。
– 自社の業種・業態に適した機能があるか
– 簡単な操作性と十分なサポート体制が整っているか
– クラウド型かオンプレミス型か
– 導入コストと運用コストのバランスは適切か
– 税理士や会計事務所とのデータ連携に対応しているか
特に、自社の業種・業態に適した機能があるかどうかは重要です。例えば、製造業であれば原価計算機能、小売業であれば在庫管理機能など、業種特有の機能が必要となります。
また、クラウド型かオンプレミス型かも重要な選択ポイントです。クラウド型は、インターネットを通じてサービスを利用するため、導入コストが低く、どこからでもアクセスできるメリットがあります。一方、オンプレミス型は、自社のサーバーにソフトをインストールして使用するため、カスタマイズ性が高いメリットがあります。
会計ソフトの選択肢は多岐にわたるため、複数の製品を比較検討することをおすすめします。無料トライアルを活用して、実際の使い勝手を確認するのも良いでしょう。
さらに、税理士や会計事務所とのデータ連携に対応しているかどうかも重要です。将来的に税理士に依頼する可能性を考慮して、データ移行がスムーズに行えるソフトを選ぶと安心です。
自社に適した会計ソフトを選ぶことで、法人決算の効率化と正確性の向上につながります。会計ソフトの導入は、税理士なしで決算を行う上での重要な一歩と言えるでしょう。
ソフトを用いた記帳と決算書作成
会計ソフトを導入したら、まず日々の記帳から始めましょう。会計ソフトを使えば、取引の入力から仕訳、帳簿の作成までを一括して行うことができます。
具体的には、以下のような手順で記帳を行います。
1. 取引の入力:日々の取引を、取引日、取引先、金額、勘定科目などの情報を入力します。
2. 仕訳の作成:入力された取引情報をもとに、自動的に仕訳が作成されます。
3. 帳簿の更新:仕訳が確定すると、総勘定元帳や補助簿などの帳簿が自動的に更新されます。
4. エラーチェック:入力漏れや二重入力などのエラーがないか、随時チェックを行います。
会計ソフトを使えば、手書きの帳簿と比べて、圧倒的に効率良く記帳を行うことができます。また、自動仕訳機能により、仕訳の作成に要する時間と手間を大幅に削減できます。
次に、決算書の作成です。多くの会計ソフトには、決算書の自動作成機能が備わっています。事前に必要な設定を行っておけば、ボタン一つで以下のような決算書を作成できます。
– 貸借対照表
– 損益計算書
– 株主資本等変動計算書
– 個別注記表
– キャッシュ・フロー計算書
これらの決算書は、日々の記帳データを集計することで作成されます。手作業で行う場合と比べて、作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、計算ミスも防ぐことができます。
さらに、会計ソフトには、決算書の分析機能も備わっています。財務比率の自動計算や、グラフによる可視化など、経営状況の把握に役立つ機能が豊富です。これらの機能を活用することで、決算書から読み取れる情報を経営に生かすことができるでしょう。
会計ソフトを活用した記帳と決算書作成は、税理士なしで法人決算を行う上で欠かせない作業です。会計ソフトの機能を十分に活用することで、正確かつ効率的な決算業務が可能となります。
電子申告への対応
近年、国税庁は電子申告(e-Tax)の利用を強く推奨しています。電子申告とは、インターネットを通じて税務申告を行う方法です。書面での申告と比べて、以下のようなメリットがあります。
– 24時間365日、いつでも申告ができる
– 申告書の提出から受信通知の取得まで、オンラインで完結する
– 入力エラーや計算誤りを自動的にチェックできる
– 過去の申告データを活用できる
会計ソフトの中には、電子申告に対応しているものがあります。これらのソフトを使えば、決算書の作成から申告書の提出まで、一連の作業をスムーズに行うことができます。
具体的な手順は、以下のようになります。
1. 会計ソフトで決算書を作成する
2. 決算書のデータを基に、会計ソフトで申告書を作成する
3. 電子証明書を利用して、会計ソフトから直接e-Taxに申告書を提出する
4. 受信通知を会計ソフトで確認する
電子申告に対応した会計ソフトを利用することで、書面での申告と比べて大幅に作業時間を短縮できます。また、入力誤りや計算誤りを防ぐことができるため、申告書の正確性も向上します。
ただし、電子申告を行うためには、事前準備が必要です。電子証明書の取得や、e-Taxの利用者登録など、一定の手続きを行わなければなりません。また、セキュリティ対策にも十分な注意が必要です。
電子申告は、今後ますます普及していくことが予想されます。税理士なしで法人決算を行う場合も、電子申告への対応は避けて通れない課題と言えるでしょう。電子申告に対応した会計ソフトの導入を検討し、申告業務の効率化を図ることをおすすめします。
税理士に依頼する場合の費用相場
顧問契約とスポット契約の違い
税理士に法人決算を依頼する際には、顧問契約を結ぶ方法と、スポット契約を結ぶ方法があります。それぞれの特徴を理解し、自社に適した契約形態を選ぶ必要があります。
顧問契約は、税理士と継続的な契約を結び、年間を通じて税務や会計の相談に乗ってもらう形態です。月次決算や年次決算、税務申告などの一連の業務を依頼することができます。また、税務調査の立ち合いや、税務トラブルの解決なども依頼できます。
顧問契約のメリットは、以下の通りです。
– 税理士が自社の財務状況を深く理解してくれるため、的確なアドバイスが得られる
– 定期的な相談により、税務リスクの早期発見・早期対応が可能になる
– 税務調査の対応を任せられるため、負担が軽減される
– 税法改正の情報を随時得られるため、速やかに対応できる
一方、デメリットとしては、以下の点が挙げられます。
– 月額の顧問料がかかるため、コストが高くなる傾向がある
– 顧問先が多数の事務所の場合、自社への対応が手薄になる可能性がある
スポット契約は、決算時のみ税理士に依頼する形態です。年に1回の決算申告業務のみを税理士に任せ、日常的な税務相談は行わないというケースが一般的です。
スポット契約のメリットは、以下の通りです。
– 顧問契約と比べて、費用を抑えられる
– 必要な時だけ税理士を利用できるため、柔軟な対応が可能である
デメリットとしては、以下の点が挙げられます。
– 自社の財務状況を理解してもらうのに時間がかかる
– 緊急の税務相談には対応してもらえない可能性がある
– 税務リスクの早期発見が難しい
顧問契約とスポット契約、どちらを選ぶべきかは、自社の財務状況や税務リスク、予算など、様々な要因を考慮して決める必要があります。一般的には、税務リスクが高い企業や、税務処理が複雑な企業は、顧問契約を結ぶことをおすすめします。一方、税務リスクが低く、決算処理も比較的シンプルな企業は、スポット契約でも十分な場合があります。
ただし、スポット契約を選ぶ場合でも、税理士との関係性は大切にしましょう。決算時以外にも、税務に関する疑問があれば、気軽に相談できる関係を築いておくと良いでしょう。
費用を抑えるためのポイント
税理士に法人決算を依頼する際には、費用を抑えることも重要なポイントです。税理士の報酬は、事務所によって異なりますが、以下のような方法で費用を抑えることができます。
1. 日々の記帳は自社で行う:税理士に丸投げせず、日々の記帳は自社で行いましょう。記帳代行を依頼すると、別途報酬がかかります。
2. 書類は整理して提出する:税理士に提出する書類は、事前に整理しておくことが大切です。書類が整理されていれば、税理士の作業時間を短縮でき、報酬を抑えられます。
3. 決算書の作成は会計ソフトを活用する:決算書の作成は、会計ソフトを活用しましょう。手作業で行うよりも、作業時間を大幅に短縮できます。
4. スポット契約を活用する:税務リスクが低く、決算処理もシンプルな企業は、顧問契約ではなくスポット契約を選ぶことで、費用を抑えられます。
5. 複数の事務所に見積もりを取る:税理士の報酬は事務所によって異なるため、複数の事務所に見積もりを取ることをおすすめします。ただし、報酬だけでなく、サービス内容も比較しましょう。
6. 早めに依頼する:決算時期は税理士の繁忙期です。早めに依頼することで、割増料金を避けられる可能性があります。
ただし、費用を抑えることだけに注力するのは避けましょう。税理士の報酬は、税務リスクを管理するためのコストと捉えることが重要です。適切な報酬を支払うことで、質の高いサービスを受けられるのです。
費用と品質のバランスを考えながら、自社に合った税理士を選ぶことが、賢明な経営者の判断と言えるでしょう。税理士との信頼関係を築き、長期的な視点で税務リスクをマネジメントしていくことが重要です。
税理士なしで法人決算を行うか、税理士に依頼するかは、経営者の重要な意思決定の一つです。自社の状況を見極め、メリットとデメリットを慎重に比較検討することが求められます。
税理士に依頼する場合も、費用対効果を考えながら、適切な契約形態を選ぶことが肝要です。税理士との良好な関係を築き、税務リスクを適切にマネジメントすることで、安定的な企業経営を実現しましょう。
法人決算は、企業の根幹を成す重要な業務です。税理士なしで行うか、税理士に依頼するかは、一つの岐路と言えるでしょう。本記事が、経営者の皆様の意思決定の一助となれば幸いです。
法人決算を税理士なしで行うためのまとめ
法人決算は専門的な知識が必要なため、多くの企業では税理士に依頼していますが、税理士なしで自力で行うことも可能です。ただし、法人決算を自分で行う場合は、税務や会計の知識を身につけ、かなりの時間と労力が必要になります。
一方で、税理士報酬の削減や経営状況の把握といったメリットもあります。会計ソフトを活用すれば、効率的に処理できるでしょう。
自社の状況を見極め、メリットとデメリットを比較検討したうえで、税理士なしの法人決算に挑戦してみてはいかがでしょうか。本記事が意思決定の一助となれば幸いです。
項目 | ポイント |
---|---|
税理士なしで決算可能か | 可能だが専門知識と時間・労力が必要 |
メリット | コスト削減、経営把握 |
デメリット | 時間と手間、ミスのリスク、税務調査対応の難しさ、節税対策の限界 |
具体的な手順 | 日々の記帳、試算表作成、決算整理仕訳、決算書類作成、申告書作成・提出、納税 |
必要書類 | 決算報告書(貸借対照表、損益計算書等)、法人税申告書、勘定科目内訳明細書等 |
注意点 | 会計・税務知識の必要性、時間と労力、税務調査リスク、節税対策の限界 |
会計ソフトの活用 | 業種に合ったソフト選択、記帳・決算書作成の効率化、電子申告対応 |