提出した確定申告書を後から撤回したいと思ったことはありませんか。実は申告義務がなかったのに誤って書類を出してしまった、同じ内容を二重に提出してしまったなど、税務署に出した書類を取り下げたい状況は意外と起こりえます。
でも安心してください。すべてのケースで撤回できるわけではありませんが、一定の条件を満たせば確定申告の取り下げは可能です。ただし、単なる金額の間違いなら修正申告や更正の請求という別の手続きが必要になります。この違いを知らないまま対応すると、余計な手間や税負担が発生するかもしれません。
この記事では、確定申告を取り下げる具体的な手続き方法から、どんなケースで認められるのか、そして取り下げと修正申告の決定的な違いまで、実務で本当に役立つ知識を解説していきます。千代田区で事業を営むあなたが、もし税務書類の撤回で困ったときに、正しい判断ができるようになるはずです。
確定申告の取り下げ手続き方法
撤回を希望する場合は、取下書という書類を作成して税務署に提出する必要があります。
取下書の作成と必要項目
取下書には決まった書式がなく、A4サイズの用紙に必要事項を記載すれば手書きでもワード等での作成でも構いません。必要な記載項目は明確です。
提出日と撤回する書類の提出日、書類名、提出方法が書面かe-Taxかを明記し、撤回する旨を記載します。理由も明記する必要があり、提出日の日付、住所、名前を記入して押印します。
例えば、既に提出済みの申告書があったため重複提出してしまった場合、その旨を理由として記載します。控えがあればそのコピーを添付すると丁寧ですが、控えがない場合は不要です。
提出方法
提出方法は複数あります。管轄の税務署へ直接持参する方法、郵送する方法のいずれでも対応可能です。税務署に不明点があれば、まず直接電話をかけて指示を仰ぐのが良い対応となります。
e-Taxで申告書を提出していた場合でも、取下書自体は書面で提出するのが一般的な対応となっています。電子申告システムには取下書の専用フォーマットが用意されていないためです。
確定申告の取り下げが認められる主なケース
誤提出・重複提出など明らかなミスの場合
過去の申告書を出し忘れていたと思って再度作成して提出したところ、実は既に提出済みだった場合などは、同じものを2つ提出したことになります。このような重複提出のケースでは、一方を撤回する対応が可能です。
税務署から電話連絡があり、既に提出されていることを伝えられ、撤回するか修正申告するか更正の請求をするか選択を求められることもあります。
夫の申告書なのに間違って妻の氏名で提出した場合など、申告書が無効と認められる場合に、税務署の指導により納税者から取下書が提出されたときにできます。
申告義務がない者による誤申告
申告義務がない者から提出された申告書で、第3期分の税額がある場合は撤回書により撤回できます。これは所得税基本通達121-2に定められた運用です。
給与所得しかなく年末調整を受けていて、他の所得が20万円以下で本来は申告不要のケースで、少しでも所得があれば申告しなければと勘違いして申告した結果、かえって税金を納めることになってしまった場合などが該当します。
源泉徴収されている公的年金等の収入金額が200万円で、不動産所得が15万円である者が申告をして納付税額が発生していても、本人の申出により撤回できます。
重要なのは、申告義務がないという前提条件です。基本的には提出期限内であれば撤回できることが多いのですが、一度撤回すると再度出すということはできないことが多いため、撤回する前に税務署によく確認する必要があります。税務署からも本当に撤回するか、大丈夫かと割としつこく確認してくれることが多いです。
注意しなければならないのは、還付申告の場合は取下げができない点です。申告義務がなくても、還付を受けるための申告をしている場合は、撤回の対象にはなりません。
確定申告取り下げ後の税務上の扱い
無申告扱い・過誤納還付の可否
原則として申告行為は申告と同時に税額が具体的に確定するものであるため、取り下げることはできません。つまり、一度申告したという事実は法律上非常に重い意味を持ちます。
ただし、申告書が無効と認められる場合に、税務署の指導により行われる場合に認められています。法律上はっきり規定されているわけではなく、実務上の運用として限定的に認められています。
撤回が認められると、その申告はなかったものとして扱われます。納付した税金がある場合、過誤納金として還付されることになります。
修正申告・更正の請求との違い
提出した申告書に間違いがある場合は、取下げではなく修正申告や更正の請求での訂正となります。この区別は極めて重要です。
修正申告は税額を実際より少なく申告していた場合や還付金額を多く申告していた場合に行う手続きです。更正の請求は税額を実際より多く申告していた場合や還付金額を少なく申告していた場合に行う手続きです。
取下げは納税者側が自主的に提出をやめる行為であり、重複提出など明確に不要な申告書があり納税者自身が取下げを申し出る場合などが該当します。これに対し却下は税務署側が内容や要件が満たされていないので受理しないと一方的に判断し処分を下すことであり、期限超過や形式要件不備で門前払いになる場合が該当します。
確定申告期限内に誤りに気付いた場合は訂正申告として改めて申告書を作成し、期限までに提出すればよく、最後に提出した申告書が正しいものとして扱われます。
更正の請求ができる期間は原則として法定申告期限から5年以内です。修正申告は税務署から更正を受けるまではいつでもできますが、なるべく早く申告する必要があります。
確定申告期限内であれば改めて出し直した一番新しい申告書が正式な申告として扱われますので、取下げ手続きをしなくても事実上最新の提出分が優先されます。
千代田区で事業を営む経営者にとって、千代田区税理士による税務処理の正確性は経営の基盤です。申告書類の撤回という特殊な手続きは頻繁に発生するものではありませんが、万が一の際の対応方法を知っておくことで、無用な税負担や手続きの混乱を避けられます。
確定申告の取り下げに関するまとめ
確定申告の取り下げに関するまとめとして、重要なポイントを整理します。
いちど税務署に提出した申告書でも、かぎられたケースにおいては撤回することができます。取下書とよばれる書類を作成して税務署に提出すれば手続きは完了しますが、この撤回が認められるのはあくまで特定の状況にかぎられます。
申告義務がない人が誤って提出した場合や、おなじ申告書を重複して提出してしまった場合などが、取り下げが認められる代表的なケースです。ただし還付申告については撤回できないため注意が必要となります。
また取り下げと修正申告、更正の請求はまったく別の手続きです。単なる金額のまちがいであれば、取り下げではなく修正申告や更正の請求で対応することになります。修正申告は税額を少なく申告していたときに、更正の請求は税額を多く申告していたときに使う手続きです。
税務書類の撤回は実務上かぎられた運用として認められているため、まずは管轄の税務署に相談して、じぶんのケースが取り下げの対象となるか確認することが大切です。
| 手続きの種類 | 対象となるケース | 提出する書類 |
|---|---|---|
| 取り下げ | 申告義務がないのに誤って提出した場合、重複提出など | 取下書(撤回書) |
| 訂正申告 | 申告期限内に間違いに気づいた場合 | 確定申告書(再提出) |
| 修正申告 | 申告期限後、税額を少なく申告していた場合 | 確定申告書 |
| 更正の請求 | 申告期限後、税額を多く申告していた場合 | 更正の請求書 |

